2021/02/19 12:55

今回は、知識がなくても岩茶を更にはお茶を楽しめる事をお伝えしたいと思います。


岩茶を紹介させて頂く中で、

「私岩茶の知識がないので、頂くのは勿体ないです」や「岩茶を勉強していないので私には飲む資格がないです」という方に出会う事があります。

私としてはむしろそういう方にこそ沢山飲んで頂きたいと思います!

飲むことそのものが岩茶を知ることになりますし、百聞は一見にしかずともいいますし。


家でステーキを焼いたり、ケーキを焼くのを楽しむように岩茶も楽しんで頂きたいと考えています。


しかしながらお客様のお声や私の経験から、楽しむ事を阻害するいくつかの要因があるように思います。「知識がなければ飲めない」とか「知識がなければ恥ずかしい」という障壁です。


本当はそんなことはまったくないのですが…


今回は「これはちょっと?」と感じたエピソードを交えての物語形式でそこに私がツッコミを入れていくような構成で知識がなくてもお茶を楽しめる事をお伝えしたいと思います。


少々批判的な内容も含みますので、閲覧の際はご注意頂けたらと思います。





それでは、ご覧下さいませ。


エピソード1〜知識なければ編〜

これは私があるお茶の集まりに参加させて頂いた時の話です。その日はお茶が大好きな方々とご一緒させて頂いたのですが、ある方と席が近くなりお話することになったのです。この方を仮にAさんとしましょう。

Aさんは学位をもった方で現地にも赴いてお茶を勉強されているという経歴をもつ方でした。

もう1人一緒に話していたBさんはお茶淹れの方です。

そこに加わり私を含めて3人での会話がはじまりました。

始めは集まりの雰囲気を楽しんでいたのですが、その後は話が盛り上がり茶樹品種や製法の話になりました。

さて、ここでAさんが一緒に話していたBさんにある茶樹品種の特徴的な香りを知っているかと尋ねたのですが、Bさんは答えることができず、わからないと言いました。

そこでAさんからBさんに以下のような返答がきました。

Aさん「この品種の特徴は〇〇香でしょ!お茶やってたら当たり前に知っておくべきことだと思うけど…」

そして最後にAさんは次のようにおっしゃいました。

Aさん「知識がなければ良いお茶は飲まない方が良い」


Bさん絶句、私は開いた口が塞がりませんでした。


まず、お茶を飲むにあたり品種香の特徴を諳んじるという特殊スキルがそこまで重要でしょうか?純粋にお茶が好きなだけで十分ではないでしょうか?

岩茶においての主要品種ですら多様な香味を醸し出し、この品種からこの香りが!?と私も驚かされる事があります。

市場で見かける畑名が同じで品種も同じ岩茶同士ですらまったく異なる品質であることがざらにあります。名前(知識)が意味をなさないという1つの理由でもあります。

飲み手の多くは決して品種当てゲームのプロではないのだと思います。

逆に専門店はお客様に一定品質のお茶が提供できているかどうかが重要だと考えます。異常サンプルの判断に関しては、意地でも外しません(品種は外すかもですが(笑))。


そして最たるは知識なきもの良いお茶は飲まない方が良いという独自の領域展開(怖)。

Aさんの認識する良いお茶とは高価なお茶という意味でしょうか?知識がなければ高価なお料理はお召し上がりにならない方なのでしょうか?

レストランに行ってカレーを注文した際に、このカレーのスパイスはどこ産の〇〇種の配合がこれぐらいで、この〇〇産の高級スパイスを加えた時にのみこの味が出て〜〜みたいなことをされてるんですかね?

ある意味すごいです。


さて、そもそも良いお茶とは何か?それはそのお茶を飲んだ本人が認識、判断する事で他の方が判断できないのではないでしょうか?

苦いから、渋いから良くないお茶と判断する方もいれば、この苦味こそが良いと判断する方もいらっしゃいます。


そのお茶がもつメリットとデメリット、品質が高い低いが、その方の感じる良い悪いと直結しないのはそのためなのだと思います。


岩茶専門店を経営していながらまだまだ知らない事が多い岩茶。プロでも品種を外すことも多いにありえます。

知識がなくても本当に大丈夫です!堂々とお茶を楽しみましょう!

知識を問われたらニコッと笑って「存じません」で流し、お茶を目一杯楽しみましょう。



エピソード2〜背景がわかる編〜

あるお茶淹れの方の話です。その方はお茶の知識を伝える活動をされていて、おそらく本などで沢山勉強をされていらっしゃると思うのですが、ある時岩茶に関する告知を見かけました。

その方の主張は

「様々な茶会に参加しどのような岩茶に出会ってもその岩茶の背景が理解できるように学んで頂く」

だそうです。


結論から申し上げて、難しいのではないかと思います。


皇御茗の例で申し上げれば、皇御茗の2020年最新の岩茶、裏を返せば創業から代々125年かけて構築してきた岩茶製法の最先端であり、その中には企業秘密にあたる独自の製法や、独自の畑の管理、携わる方々など様々な要素でたった1種類の岩茶が作り上げられています。

1つの商品に1つのレシピがあります。

よく岩茶で話題になる焙煎に関しても、ただ単に最終的な焙煎度合いが変わるから味が変わるというものでもなく、数多くの工程一つ一つが商品により異なるのです。

数ある武夷山岩茶メーカーの中の例1つをとっても様々な知られざる背景があります。それをわかると言えてしまうのが逆に本当なのだとしたら是非ともその方に御教示いただきたいです。岩茶教えてください!!m(_ _)m


更に現在も研究が続いており、これから更に岩茶は進化していきます。今の最先端の内容が本になっている頃にはもはや古い知識となっているでしょう。


お茶会に関して申し上げれば、会で供されたお茶を判断しようと思うのはその方の自由ですが、背景を探ろうとか品質を判断しようとかいうことよりも、個人的には更に大事なことがあると思います。


お茶の淹れ手は、その茶会を開くために何度も試行錯誤しお茶淹れの練習をしますし、お菓子と合わせるならば徹底的に相性を確認したり、敢えていつもとは違うお茶の濃度で出す練習もします。参加者の方に心地よくなって頂けるように、テーマを決め様々な趣向を凝らしても、決して押し付けがましくなくお客様をお迎えする配慮と準備をして下さっています。

これは私の意見ですが、どんなお茶会にでて、どんなお茶か判断出来る事よりも主催者のお客様に対する些細な気遣いを当たり前と思わずに、こんなところにまでお気遣い頂いていて有り難いなと気づける感性の方がよほど大事なことなのではないでしょうか。

幸い日本にも素敵なお茶の淹れ手の方が沢山いらっしゃいますしそうした方々のおかげで中国茶が好きになるお客様もいらっしゃいます。

そしてそのおかげで岩茶に興味を持ち弊社店舗にも遊びに来てくださる方もいらっしゃいますので、大変有り難いです。


もし個人的にお茶を判断したい方がいらっしゃいましたらそれ自体はプロが通る道ですし、むしろ応援したいと考えています。

基準がなければ品質の高い低いもありませんし、比較がなければお茶の多様性もないのだと思います。

原材料や製法と実際の味わいをリンクさせていくという勉強をすればするほど官能検査のスキルは向上していきますし、現場に近い専門職人ほどこのスキルが必要になります。

ただしこれらは、自身の中だけですることであり決して下した品質の判断が飲み手にとって必ずしも良いとは「判断」はできないのだと思います。


もしお茶会などで自身の意見としての「良い悪い」を押しつけて来る方がいらっしゃいましたら、ニコッと笑顔でスルーされるのがオススメです!




知識がないからこそ、未知のお茶に出会ってワクワクしたり、冒険心を掻き立てられたり、名前や知識に惑わされないからこそ純粋にお茶を楽しめるということもあります。

私も知識がなかった頃の方が実はお茶楽しんでた?と想うことがあったります。


皆様がお茶を人生の中に要素として取り入れ、時にお茶との素敵な物語を紡いでいかれることを願います。


長文となりましたが、最後まで読んでいただき誠にありがとうございました。